舞踏会~ラストダンス~

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ハイゼンベルクが(私的)制裁を受けている頃、艦隊旗艦、フレースヴェルグの艦橋では、各軍司令官クラスが集まり、事態を見守っていた 「友軍との合流は滞りなく出来そうかね?」 「えぇ、まぁ多少の時間の誤差はあるでしょうが、開戦までには問題なく済むでしょう」 「IFF(敵味方識別機)は?」 「こちらへ向かっている友軍艦隊、並びに航空隊の情報はすでに入力してあります」 「そうか……で、帝国からは何かコンタクトは?」 「……いまのところは」 「なし………か」 艦橋に微妙な空気が流れた 大陸の列強各国の部隊が集う敵と交戦するには、やはり帝国の力は必要不可欠になってくる 「ルーウェルト中佐がヘマを犯すとも思えんが……過信はすべきではないか」 「まぁ彼とて人間ですから、完全無欠とは言えますまい」 「とは言え、あのカリスマに出来なかったとなれば、他の誰がやっても結果は変わるまい」 「それは同感です。下手に歳をくった我々では、どうしても腹の内を晒すのに抵抗がありますからな」 「そんな態度であの強国を説得せしめるは不可能、か」 「内部で抗争しているとはいえ、軍事力は我が国に勝るとも劣らぬ国。下手に出たくはないが、上手にも出れず……あの国との外交は、大戦前から苦心させられたと言うくらいですから」 「北の狼、か。牙も爪も、その闘争本能も、我々の手には余る」 「ですが、この戦争で彼らが友軍となったならば、間違いなく両国の関係は改善されるはず。対等な協定を結ぶことも、不可能ではなくなるでしょう」 「そういう意味でも、帝国には参戦して貰わねばなぁ……それと、ルーウェルト中佐にも、生き残って貰わんと困る」 「帝国との融和の架け橋にはやはり、彼を?」 「他に適任がいると?」 「……いますまいな。まぁ、彼は野心とは程遠い人間。それに、味方につけてあれほど心強い者もそうはおりますまい」 「だな。彼にはこの戦争の後にはまた、出世し、高い身分を得て、我が国の為に尽力してもらわねばならん」 「はい」 こういった政治的会話は、クロイツには無縁であったはずだが、彼はいまは、そうは言っていられない程になっている
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