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「翔いくよー」
ダンゴムシに視線を固定している男の子を引っ張るように横断歩道を手を上げながら渡っていたその時だった。
「危ない!」
向こう側から女性の叫び声が聞こえたと思った刹那、女の子の体全体に衝撃が走った。撥ねた車はそのまま逃走した。
「おねぇちゃぁぁああ……!!」
だんだん意識が遠退く。男の子のむせび泣きや悲痛な叫びも徐々に聞こえなくなってきた。
「女の子がはねられた!誰か救急車を!」
「轢き逃げか……」
「うわああああああぁぁぁあ!!!!
おねえぇぇちゃぁぁぁん!!!!!!!」
全身痛む筈なのに何故か心地よい眠りにつくように、そのまま意識を失った。
幸い、意識を取り戻した。
気づいたときには病院のベッドで横になっていた。頭と手足に包帯が巻かれている。
「幸!」
「おねえちゃん!」
「幸、大丈夫か?」
「…………お……かあ…さ………おとう……………かける……」
「よかった! 幸、本当によかった……!」
泣きながら母親は女の子を抱き締める。男の子は喜び、父親も安堵を浮かべた。
「こんな小さな体で、奇跡としか言いようがありません」
医師がカーテンをわけて入ってきた。
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