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「先生! 娘をありがとうございます!
あぁ本当になんてお礼を申し出たらいいことやら…」
「おいしゃさんがなおしたの? すごーい!」
「そうだよ」
担当医師は安静にしていれば来月には退院できると告げた。
とりあえず一安心した。
それから数日。
ひき逃げした犯人はおろか、有力な情報が得られないまま、退院して初めての登校。この日は母親同伴だ。
「授業がしっかり受けられているか、側で見ててください」
「分かりました。先生、娘をよろしくお願いします」
「幸ちゃんは普段から積極的に手を上げて答えています。また元気な姿が見れて嬉しいですね」
担任の先生はそう言うが、教室の隅の方で首を傾げる我が娘が気になって安心できない。
「幸、何か分からないの?」
「うん。
なんかね、思い出せないの」
「何が? 分からないところは先生に聞けばいいじゃない。
ずっと入院してたから勉強はみんなより遅れてるかもしれないけど、そこはお友達に聞けば分かるわよ」
しかし母親は、衝撃の言葉を聞く。
「あのね、みんな、誰だかわからないの」
「……何言ってるの?
ほ、ほら、お友達も心配してるわ」
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