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「うんと、名前が思い出せないし、誰だかわからないの。
この子だぁれ?」
母親と先生は顔を見合わせた。誰と言われた児童は半泣きだ。
「覚えてないの!?
いっつも公園で遊んでるじゃん!
一緒に砂のトンネルつくったじゃないか!
何でわからないの!?」
ついに児童は泣き出してしまった。女の子はうーんうーんと唸るも、何も出てこなかった。
「まさか…………」
『記憶喪失』
母親の脳裏をよぎった。
それから女の子は、引っ越すことになった。理由は父親の転勤と女の子の療養のため。医師はここより遠いが緑が多いところを紹介してくれた。
「喧騒な街より静かな田舎の方がいいでしょう」
「分かりました。
先生、今までお世話になりました」
両親は深々と頭を下げる。
医師たちに見送られながら、一家は遠い田舎町に向かった。
「――ん。幸ちゃん。
どうしたの?」
「はっ!
私今ボーッとしてた!?」
瑞希はうなずく。
小さい頃の出来事が走馬灯のように映し出された。
「はぁ~……何でこんな時に出てくるのよ」
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