2:下僕ライフ、始まります

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「何て名前か、当ててみろ」 え、何このゲーム。 名前当てクイズーみたいなノリに、オレ、正直ついていけません。 「え、えと…」 「別に呼びたいように呼べよ。オレ気にしねぇし」 さすがに不良さんとは呼べないよね。呼んだ瞬間、綺麗な川へ案内されそうだ。 死んだばあちゃんに、手振られたら行っちゃうかも… あ、じゃなくて。 …あだ名で良いかな。 「えと…赤先輩、で良いですか?」 「……それはオレの髪が赤いからか?」 「はい…」 「赤、先輩ねぇ…」 すみません、単純な思考回路で。 少し考えながら赤毛をいじり、それからオレの頭をパシパシ叩く。 「ん。悪かねぇぜ」 よかった…気に入らなくて消されてしまうかと思った…… それから赤先輩はニヤリとまた笑う。 「先輩、って呼ばれたのも初だしな。新鮮新鮮」 「え? もしかして、先輩じゃなかったんですか?」 こんなに堂々としてるのに、同学年だとおっしゃるんですか? 赤先輩は首を横に振った。 「いや、お前よりは先輩だぜ?」 「そ、そうですか」 「先輩呼びは新鮮だけどな。大、やっぱりオレの下僕になれよ。お前面白いから飽きねぇと思うし」 「それはちょっと…」 「アァン!?」 「ヒィッ!! ごめんなさいごめんなさいっ、調子に乗ってすみませんっ!!」 赤先輩の威嚇は普通に怖いんです。しかもこの近距離で凄まれたら、オレのチキンハートは奮え上がるんです。 でも、オレ、桜庭先輩の下僕をやめる訳にもいかないし…命のために悪魔と契約したんだから。 …オレ、心の中の桜庭先輩の扱い、酷くないかな? 赤先輩は奮えてるオレの制服を掴むと、下僕の証…じゃなかった。風紀委員の証を見てる。 「チッ。風紀なのが唯一ムカつくぜ」 あぁ…やっぱり風紀嫌いなんですね。不良さんですもんね。 「……風紀?」 ちょっと遠くから、ボソッとした声が聞こえ、オレは無意識に視線を向けた。 ウェーブかかった髪に、眠たげな視線。整った顔立ちに、きちんと結ばれたネクタイについてる金色のピンが印象の男生徒、それでいてこの存在感。 「チッ…また面倒くさい奴が出て来やがった」 オレのすぐそばで舌打ちする赤先輩は、この人と知り合いなのかな? 彼は眠たそうに一回伸びをして、オレ達に少しだけ近付いて来た。
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