1:下僕になりました

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顎に足をかけられたまま、視界を滲んでいくのがわかる。 ヤバい、マジ泣きしそう。 と言うか、恐怖で体の震えが止まらないです。 この鬼から、誰でも良いですっ!! 助けて! ヘルプミー!! 「ボンジュール、桜庭! 今日も君のその清々しいほどの鬼畜っぷりを見に、この田畑謙次郎が、直々に会いに来たよ!!」 いきなり教室のドアが開いたと同時に、何か……頭が変な人が来ちゃいました。 唖然と来訪者に視線を向けていると、すぐ近くで忌ま忌ましそうな舌打ちが。 誰か、なんて言わずもがな。桜庭先輩しかいない。 変な来訪者は、眼鏡を上げ直し、オレ達の方へリズミカルな足取りで近付いてくる。オレは無意識に顔を背けた。 関わっちゃいけない人種だ……!! 「おやぁ、あまりに僕が美し過ぎて、言葉も出ないのかい? あっはっは、仕方ないなぁ、桜庭は照れ屋さん、だ・ね☆」 「………………」 桜庭先輩は無視を決め込んでいる。 と言うか、何このウザったい喋り方……いや、ウザったい性格の人。 「んん~? そこで地べたに這いつくばっている子羊は、誰だぁい?」 …オレのことですか? 興味を持たないで下さい!! オレは空気! オレは空気!! 「ふふ…そう恥ずかしがらずに、僕にお顔を見せてごらぁん」 「ヒッ……っ」 顔を掴まれ、無理矢理向けさせられて、オレは変な来訪者に顔を向ける羽目に。 綺麗な人だ… 眼鏡してても、睫毛の長さがわかる…整った鼻に、綺麗な口許…オレが女生徒だったら惚れていたかも知れないけど、残念ながら、オレは男だ。 「随分…可愛らしい子だね。でも僕の好みじゃあない」 よかったです。あなたの好みにヒットしなくて。 オレもあなたは好みじゃないんです。 「桜庭。君の、かい?」 「五月蝿い」 「っうぶ!!」 桜庭先輩はオレの顔を思い切り蹴る。 すっげー痛いです。と言うか背中壁に強打。 扱いが雑過ぎる。 「俺に話し掛けるな。消え失せろ、カス」 「本当に照れ屋だなぁ、桜庭は! 僕のような絶世の美形に話し掛けられて照れちゃうのはわかるが、子羊くんを労ったらどうだい。可愛い顔が台なしだ」 その人に話し掛けられたのが不愉快だから、オレを蹴ったんですか? と言うか、その人頭おかしいことは言うけど、良い人っぽいです。 「お前には関係ない」 「関係あるさ! 君と僕の関係に、秘密なんてノンノン!!」 「…………」 何かわからないけど、桜庭先輩がキレかけてる…
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