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顎に足をかけられたまま、視界を滲んでいくのがわかる。
ヤバい、マジ泣きしそう。
と言うか、恐怖で体の震えが止まらないです。
この鬼から、誰でも良いですっ!! 助けて!
ヘルプミー!!
「ボンジュール、桜庭! 今日も君のその清々しいほどの鬼畜っぷりを見に、この田畑謙次郎が、直々に会いに来たよ!!」
いきなり教室のドアが開いたと同時に、何か……頭が変な人が来ちゃいました。
唖然と来訪者に視線を向けていると、すぐ近くで忌ま忌ましそうな舌打ちが。
誰か、なんて言わずもがな。桜庭先輩しかいない。
変な来訪者は、眼鏡を上げ直し、オレ達の方へリズミカルな足取りで近付いてくる。オレは無意識に顔を背けた。
関わっちゃいけない人種だ……!!
「おやぁ、あまりに僕が美し過ぎて、言葉も出ないのかい? あっはっは、仕方ないなぁ、桜庭は照れ屋さん、だ・ね☆」
「………………」
桜庭先輩は無視を決め込んでいる。
と言うか、何このウザったい喋り方……いや、ウザったい性格の人。
「んん~? そこで地べたに這いつくばっている子羊は、誰だぁい?」
…オレのことですか?
興味を持たないで下さい!!
オレは空気!
オレは空気!!
「ふふ…そう恥ずかしがらずに、僕にお顔を見せてごらぁん」
「ヒッ……っ」
顔を掴まれ、無理矢理向けさせられて、オレは変な来訪者に顔を向ける羽目に。
綺麗な人だ…
眼鏡してても、睫毛の長さがわかる…整った鼻に、綺麗な口許…オレが女生徒だったら惚れていたかも知れないけど、残念ながら、オレは男だ。
「随分…可愛らしい子だね。でも僕の好みじゃあない」
よかったです。あなたの好みにヒットしなくて。
オレもあなたは好みじゃないんです。
「桜庭。君の、かい?」
「五月蝿い」
「っうぶ!!」
桜庭先輩はオレの顔を思い切り蹴る。
すっげー痛いです。と言うか背中壁に強打。
扱いが雑過ぎる。
「俺に話し掛けるな。消え失せろ、カス」
「本当に照れ屋だなぁ、桜庭は! 僕のような絶世の美形に話し掛けられて照れちゃうのはわかるが、子羊くんを労ったらどうだい。可愛い顔が台なしだ」
その人に話し掛けられたのが不愉快だから、オレを蹴ったんですか?
と言うか、その人頭おかしいことは言うけど、良い人っぽいです。
「お前には関係ない」
「関係あるさ! 君と僕の関係に、秘密なんてノンノン!!」
「…………」
何かわからないけど、桜庭先輩がキレかけてる…
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