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「じゃあ、指輪交換」
横山君が言うと俺はポケットから指輪を出した。
ヒロは手を伸ばす。ゆっくりはめて、次はヒロがはめてくれた。
どこか物寂しい秋には君のピエロに、北風吹き荒れる冬には君の暖炉になるよ。
これから先何十年ふたりで暮らして行けば、そりゃケンカもすりゃ、君を泣かせてしまうこともある。
それでもどうかそばに、愛しき君よ俺のそばに。
“幸せの場所”は君だから。
「これから先何十年、俺が先に逝ってもお願いです、どうか悲しまないで笑っててください。「あなたに出逢えて僕、幸せでした」と思われるように、惜しみなく愛を注ぐから」
「うん…ありがとう」
ヒロの目にはうっすらと涙が浮かんだ。
「ごめんなさい、こんな席でしんみりさせちゃったね」
「ほんまや!俺泣きそうになったわ!」
「ヒナが泣き虫なだけやろ」
「すばるだって泣きそうになってるくせに」
「俺はなってへんわー!」
「大丈夫。そんな簡単に俺は死にません」
俺は二人に笑った。
「じゃあ誓いのキスを」
横山君は最後まで神父らしかった。
俺とヒロはみんなの前で、木漏れ日が教会のガラスを通る色鮮やかな光の中、誓いのキスをした。
「約束します。ヒロを残して俺は死ねません」
-END-
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