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「はよ、起き」
オカンみたいなことを言って彼は寝室を出て行った。
「あっ……待って!」
急いで降りたベッド、抱き締めた体、太陽の光。全てのモノが愛しく感じるのは何故?
ねぇ、あなたなら分かるの?
「大倉…ちょっ……離して」
彼が体をよじるから素直に離れる。
ふとテーブルを見れば光る彼の携帯。
「出てええよ」
彼のためにもそれは許す。
「おん」
開かれた携帯、画面にはあなたが一番好きな人の名前。
「もしもし?どうした?……おん、ごめん。おん……じゃあ…」
すばる君は通話やめるのボタンを押し、俺を見た。
「えっと…その、まるが…今すぐやなくてもええけど……会いたいって…」
俺の目をじっと見て言う彼。
ねぇ、“今すぐやなくもええ”なんて嘘やんな。
あなたのその見つめるという癖がそう言ってるで。
「そっか…じゃあ、もう少し側に居って」
でもそれは彼なりの優しさだから、俺は受け入れる。
ソファーにすとんっと座った彼。俺も同じことをした。
「大倉……好きやで」
少し震えた声、潤んだ瞳。
「俺も」
反対にはっきりした声で言う俺。
あぁ、出会わなければいっそよかった。見つめ合うほどただ苦しくて。
君のやさしさを、今までの僕の涙を、空に秘かに打ち明けるだけ。
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