あの時に気づいていれば

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歌い終わるとまるはカメラに向かって一礼をした。 こんなとこも変わっとらんな…。 変わってないまるを見て思わず笑みがこぼれた。 まるが歌い終わると司会者にいろいろと質問されていた。 まるは持ち前の明るさとバカさでその場は盛り上がっていた。 数分の質問が終わり次の歌手の歌になった。 まるは後ろの方にはけて他の人の歌を聞いている。 …ように見えた。 はたから見れば真剣に聞いてる様にしか見えないが、俺は分かる。 少し寂しげな顔をしている。 何があったのかは分からないけど、あまり見たことのない顔。 この顔を見たのは……そうや…。まるが東京に行くと言って俺が見送りに行った日。 あの時にこんな顔しとった。 まる、こっちはもう雪が降っとるよ。東京はどう?まだかな? 何でそんな顔すんねん。 こんな季節だからじゃないやろ。 まるはそっちに行って、何回そんな顔をした? 俺は分からないけど、遠くに居っても支えたいと心からそう想うから。 まるが寂しいと想う夜に雪となって空から舞い降りたい。 まるを包み込み今すぐ抱きしめるから。 だからふたり過ごした時間を忘れんといて。 .
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