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電車が大きな音をたてて止まった。ホームに降り立つ僕。
ここの空気、ここから見える景色、僕を包み込む全てがあの日を思い出させる。
電車から降りた僕はある人を探す。
あの人は…?
すると人ごみから出てきた人。僕はその姿を見て駆け出した。そしてきつく抱きしめた。
「ただいま…すばる君。」
「おかえり、まる。」
僕らはしばらく抱き合っていたが、急にすばる君が体から離れた。そして僕を見つめたままにっこり笑って
「行こうや。」
と僕の手を引いた。
僕らは海に沿った防波堤に行った。あの頃のように二人で防波堤に座る。
「いきなりすいません。」
僕はすばる君の方を向いて静かに口を開く。
「何がやねん。」
すばる君は真っ直ぐ目の前の海を見て少し笑って答えた。
それでも僕は、申し訳なく話した。
「会いたいなんて連絡して…。もう3年も経っていたのに。」
するとすばる君は僕の方を向いて変わらない笑顔で言った。
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