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「さよなら。」
そう呟く君が僕の傘を残して駆けだしてゆく。
哀しみ降り出す街中が銀色に煙って、すばる君だけ、消せない。
僕は最後の雨に濡れないようにすばる君を追い掛けて
「待って!!」
後ろからただ抱き寄せ、瞳を閉じた。
「まる…やめーや…。」
「すばる君…ごめん。だけど、今日…だけは…。」
すばる君は僕から離れてこっちを向いた。そして優しく微笑んで抱きしめてくれた。
「今日…だけな。」
結局すばる君と僕の家に戻ってきてしまった。
ベッドの上には隣で眠るすばる君と弱い僕。
ほどいた髪を広げて、僕の夜、包んでくれた優しい人…。
不安な波にさらわれる君の心の砂の城。怖くて誰かを求めたんですか?
すばる君には強がりだけを覚えさせましたね。
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