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「じゃあ、しばらく帰ってこないから」
「おん。ヨコ、ソロコン頑張ってや」
「別に言われんでもやるわ」
無数の大きな窓から、そっと射し込んだ太陽。ヒナの笑顔に今と昔の、二つの面影重なる。
その笑顔に背を向けて搭乗ゲートへ。
まだまっさらな未来と歩みを止めた過去。
『寂しかったらいつでも言ってや?』
『別にヒナがいなくたって寂しくない…』
昔からヒナは誰よりも俺を心配していた。
だけど恥ずかしくて、振り返ればいつも、素直になれずにいたちっぽけな自分が。
思い出の隙間埋めるように、心の中で抱きしめる。
「着いた~」
ほんの少しのフライトで着いたコンサート地。
「一人で頑張るか!」
そっと包み込む風が、想いを乗せ空に舞う。
まだまっさらな未来が、色づき始めてく。
「横山さん入りまーす!」
スタッフの紹介で会場入りする。
三回目やけど慣れへんな…。大丈夫かな、おれ。
“ヨコ、ソロコン頑張ってや”
ヒナの言葉と笑顔がふと、脳をかすめる。
振り返らず今は歩いていけるような、そんな気がするから。
思い出のかけら拾い集め、心の中で抱きしめる。
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