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「ヒナ、そっちに行きたい」
何度口にしたか分からない願い。それと同時に雪が強く振り始めた。
それがまるでヒナからの抵抗みたいに。
「やっぱ……アカン?」
夜空舞う君が俺の黒を白に染めて背中押してゆく。
ただそれが嬉しくて、いつまでも君を見つめてた。
あと何度君に会えるなんて、数数えても分からなくて。
「今は12月25日やから、1月の最後…2月になったら雪が……」
指折り数えたのを止めた。
分かりそう、でも分かりたくなくて。
「ヒナは俺を忘れたかな?」
不安になる夜もあるけれど、どんな高価な指輪なんかより。
「忘れてへんし」
「ヒナ…」
君がくれるサプライズが何よりの贈り物やから。
声がして振り返ると、ヒナ。
「雪めっちゃかぶっとるやんけ。風邪引くで?」
夜空舞う君が俺の髪を撫でて、肌に触れ優しく笑ってる。
「大丈夫。俺は強いから風邪引かへんねん」
君の目に移りこんだ俺もまた、いつのまにか笑ってた。
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