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「ねえ君。僕と世界を救ってみないかい」
突然現れたそいつは学校帰りの僕に向かってそう言った。
「は?」
どうしてこうなった?
しばらくそのことに対して考えを巡らせてみる。
昨日の夜は遅くまでネトゲをしていたから、授業中の眠気と戦うのが今日の主な仕事だった。
そうか、今の俺は寝ぼけているんだ。それならなんとか納得出来そうだ。現にこいつは昨日やっていたネトゲに出てくるアドバイザー役のキャラクターに似ている。
「なんだ幻覚か。早く帰って寝ないとな」
無かった事にして家路につこうとする。
「えっ!?ちょっとちょっと!!僕の声が聞こえてないの?そのことないよね?君には見えてるはずだよ」
ふう。俺はよっぽど疲れているらしい。今夜もネトゲ三昧の予定だったが。考え直さなければならないな。
横を通り過ぎてツカツカと歩き始めた俺の耳元にふわふわと飛んでいるそいつを認識しながら予定を組み直す。
「あー!?絶対に聞こえてるでしょ!?心拍数とかでわかるんだからね」
段々と煩くなっていくそいつが消えないことに俺は不安に駆られてくる。
無理し過ぎたのか?
やり過ぎか?
3日で24時間はやり過
ぎたか?
「これって結構重症かも」
「何が重症なの?」
家が隣と言うだけでちょっかいを出してくる同い年の香苗が隣を同じスピードで歩いていた。
「別に。あ、おまえここになんか見えるか?」
俺は足を止めふわふわと飛んでいるそいつを指差してみる。
「なっ!?やっぱり見えてるんじゃないか!!」
「うん?どこよ?」
香苗はなんのことかわからない様子で俺の指のさきを見ている。
「なんでもねー」
俺は再び歩き始める。
やっぱり俺の幻覚だ。一刻も早くベッドに横にならなければ、この症状は変わらないだろう。
「こらー!!無視すんな!!」
「ねぇ?何が重症なのよ」
しつこいのが後ろから付いてくるのをひたすら気にしないようにしながら速度を上げて帰宅した。
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