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満員電車に揺られて通学する時間は、唯一の癒しである音楽を聴いている。 その音楽というのは、クラシック。中でも落ち着くのは交響曲、いろんな楽器が奏でる音色が心を癒してくれる。 気分良く電車を降り、階段を上がりきったところで、後ろから"トントン"と背中を叩かれた。 振り返ると他校の女子が、ちょこんと立っている。 「あのっ、これ読んで下さい」 真っ赤になった顔を俯けたまま、綺麗な柄の手紙を渡された。 「あっ、うん。――読ませてもらうよ」 手紙を受け取るとその子は、待っていた友達の所に駆けて行く。 「良かったねぇ」 小さく言った友達の声が、俺にも届いていたけれど、振り向くことなく駅を出た。
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