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校庭に咲き誇っていた桜が散り始め、春の暖かい風が心地好い。
四月中旬のある日……
俺の初恋が始まった。
予感もなにもなかったんだけど――それは突然訪れた。
運命の日……学校の帰りに、中村に誘われて楽器店にやって来た俺は、中村が熱心に店員と話している間、店内の楽器を見ながら、暇を潰していた。
ふと、トランペットの前に立ち、同じ楽器でも値段の違いがあるもんだなと、しばらく見ていた。
関西でも有名な楽器店というだけあって、たくさんのお客で賑わっている。
次から次へとお客が出入りする中、俺の見ていたトランペットのコーナーに、二人の女性が近づいて来た。
(同じ歳くらいかな?)
そう考えながらも、一人の女性から、目が離せない自分に気付く。
「すみません。見せてもらっていいですか?」
そう声をかけられハッと我に返り、
「どうぞ」と答えて体をどかした。
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