独リ 笑ウ

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雑居ビルに到着して、階段を上っていく。何故か睦葉は自室に戻らず俺についてくるのだが。 「蘭ちゃんはお父さんの方が好きだったんですか? あっ、そう言えば日本に来る前はどこに住んでたんですか?」 ここぞとばかりに睦葉が俺に様々な質問を投げ掛けてくる。 仕方なく俺はぽつりぽつりと話していく。 「……両親は俺が生まれる前から色んな国を転々としてたらしくてな。 一応、俺が生まれて物心つくまではフランスに留まってたらしい。 実を言うと子供の頃のことをあんまり憶えてない。」 まぁ、睦葉にだったら話してもいいだろう。 麗佳や将監の次に付き合いが長い存在でもあるし。 「そのあと色々あって両親が死んで、玉藻と出会って、日本に来た。」 「玉藻……って、麗佳さんと蘭ちゃんの友達だったっていう?」 「そう、それ。」 思い返すと、玉藻には返しきれない程の恩がある。 俺を命を救ってくれたこと。飯を食わせて、仕事をくれたこと。"名前をくれた"こと。 「それで日本で自衛隊に入って、私と?」 「まぁ、俺の昔話なんて聞いてもつまらんだろ。」 「いえいえ、そんなこと無いですよ?」 睦葉は俺の背中に抱き着き、こう言った。 「好きな人の事はなんでも知りたいものですし。」 「ぶっ。」 階段に足引っ掛けて、転倒。
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