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ゆっくりと意識が覚醒する。頭が重い。
どうやら俺は店のテーブルに突っ伏して寝ていたらしい。
頭を上げると、枕になっていて圧迫されていた腕に血流が勢いよく流れ始め、痺れが走る。
気がつくと寝汗で服がびっしょりと濡れていた。気持ちが悪い。もう冬も近く、汗で濡れた身体が冷える。
―――見ていた夢でも、こんな感じで腕が痺れて、寒かったような気がするな……。
「あっ、起きましたか?」
「あぁ……睦葉か……。」
睦葉が隣に座って俺の前に水の汲まれたコップを置く。
そして心配そうな顔をして、俺の顔を覗き込んできた。
「……どうした。」
「いえ、うなされてたので。顔色も良くないですし……。」
ゆっくり、ゆっくりと意識が覚醒してきて、ようやく思い出した。
今勤務中じゃねーか。
はっとして店内を見回すと睦葉は笑いながらこう言った。
「ちょっと前まで将監さんが来てたんですけどね。もう帰りましたよ。」
「……マジか……。」
緋金将監。
烏宮神社の神主を勤める俺の古い知り合い。
あまり普段から店に顔を出すようなヤツじゃ無いのだが……。何かあったのだろうか。
まぁいいか……。
また今度俺から訪ねよう。
「貞弘と月弥は?」
そう言えば、姿が見当たらない。
「二人とも先に帰りましたよ。」
「……そうか。」
コップの水を一気に飲み干して立ち上がる。
「よっし、じゃあ店閉めて帰……おっ、と……。」
立ち上がった途端、膝が笑って俺は崩れ落ちる。身体を支配する脱力感。これはそう遠くない過去にもあった。
この前、雑居ビルの階段を落下した時と同じだ。
……やっぱり血飲まなきゃ駄目かな。
生臭いから嫌いなんだけど。相当ノリノリな時じゃないと飲みたくないんだよなぁ。
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