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ゆっくりと降下していくエレベーター。サダには蘭ちゃんそっくりの少年、ナナを紹介し軽く事情を説明しておきました。
「サダ?」
「あ?」
「サダの方はどうなったんですか?お父さんとは……会えました?」
本当は殺してしまったのかと聞いてしまいたかったのですが、怖かったんです。
「ああ、会えた。相変わらず訳の分かんねぇ奴だった。」
サダは無表情でそう言った。その表情からはどんな感情も感じ取れませんでした。
「それよりそんな奴を外に連れ出して大丈夫なのか?」
サダはナナを見てそう言った。1つ変わった事がある。サダが纏う雰囲気が今まで以上に鋭く、殺気立ったモノだということ。
「大丈夫ですよ。」
ねっ?とナナに言ってみたが、ナナは無表情で月を見つめていた。
「僕はどうして死なないの?」
と彼は月光の満ちる場所に立ったまま聞いてきた。
月と太陽の光すら区別できない彼に説明をしても分からない気がして、私は笑った。
これからゆっくり教えていこう。かつて私が蘭ちゃんに世界を教わったように。
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