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「ずいぶんとリフォームしたんだな。」
75階に到着した俺の第一声はこれだった。
迷路のようなフロアだった75階は、壁はおろか天井すら取り払われ、複数階を跨ぐ吹き抜けのフロアとなっていた。
あるのは数本の柱と、無数の木の根だけ。壁には点々とライトが配置されているが、部屋が広いうえに数が少ないのでかなり薄暗い。
そしてエレベーターはここで終わり。ワイヤーを巻き上げる機械が俺達の頭上に存在している。
カードキーを持っていようが、75階からは別の手段で上がる必要があるらしい。
「……しかしこの歓迎パーティーは盛大すぎだろう。」
エレベーターを降りる。
吹き抜けのこの部屋の四方の壁には横4列の窪みが遥か彼方の天井まで数えきれないくらい存在しており、そしてそこには黒光りする金属骨格の人型戦闘マシンがずらりと並んでいた。
腕を×字に組み、直立して、顎を突き出しやや上方の虚空を見つめて立っている。不気味だ。
そして俺達が足を踏み入れると同時に、その戦闘マシン全てのモノアイが赤く点灯。
「侵入者を確認。全機体、戦闘モードを起動します。」
電子音と化した女性の声が鳴り響く。
全ての戦闘マシンが動き始める。
「こんなの相手にしてられねぇ……!」
一体何匹いるんだと叫びたくなるくらいの数だ。こんな奴らに時間も弾も浪費する暇はない。
「蘭丸、向こうにエレベーター。」
月弥が真正面を指差す。そこには確かに鉄柵のような扉の武骨なエレベーターがあった。
「あそこまで一気に行く!走れ!!」
「分かった。」
月弥は一足先に駆け出す。疾風の如く駆け抜けていくのを見ながら、俺は麗佳に手を伸ばした。
いくら気配を察知できる並々ならぬ麗佳と言えど、一人で目的地まで走れというのは不可能だ。
麗佳は薄く微笑んで、俺の手を取り「ありがと」と言った。
俺はすぐに麗佳の手を引きながら月弥に続いてエレベーターへと走った。
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