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「待ってろ!今これを退けて……!」
「退けたらあかん。ウチがわざと脆くなった柱を撃ってエレベーターを塞いだんや。」
麗佳の声。
じゃあまさかコイツはここで……。
「早く行って。ここはウチが引き受ける。」
「馬鹿言うな!無理だ!」
「まだまだあかんなぁ、蘭丸ちゃんは。」
麗佳の笑みを含んだ声。嘲笑のようでいて不思議と腹は立たない笑い。
「ウチらは無理な事を文字通り無理矢理押し通す人の背中を追っかけてたんとちゃうん?」
脳裏によぎる女性の姿。これから会いにいく女の生き様が一瞬だけ脳裏を駆け抜けていく。
「……でも!」
それとこれとは違う。玉藻と麗佳は……違う!
「でもはもういい!さっさと行けぇっ!」
初めて聞く麗佳の怒声に俺と月弥は身体を震わせた。覇気と鋭気を纏った声に俺達は戦慄したのだ。
「……死ぬなよ。」
「当たり前や。」
「死んだら追いかけてってもう一回殺すからな。」
「返り討ちにしたるわ。」
「……。」
「……。」
沈黙。
リフトの扉が閉まる。ガタンと一度大きく揺れて、リフトが上昇を始めたその時。
「蘭丸ちゃん。」
麗佳は震える声でこう言った。
「玉藻ちゃんを頼むで。」
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