天空の桜の楼閣

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――――――――― 「んんっ……久しぶりに、頑張らないとあかんなぁ。」 背伸びをしながら辺りの気配を確認する。機械の駆動音やカツカツと鳴る足音のおかげで把握は容易い。 両肩にクロスさせるようにして下げた二挺の特徴的な形状をしたサブマシンガン、P90を両手に持ち、複雑な構えをとる。 玉藻ちゃんの戦い方から学び、独自に改良を取り入れた近接射撃と格闘術の融合戦術。 「黒霧流銃拳術―――蝶華獄。」 全ての敵の攻撃を予測、回避しながら一体の死角に潜り込む。至近距離からの銃撃と、体術を武器にして、多数の敵の中を舞うように駆け抜け、同士討ちを誘いながら華麗に殲滅する特殊戦術。 黒霧流銃拳術。 蝶華獄(ちょうかごく)。 「はぁっ!!」 複数の敵のど真ん中に飛び込む。片膝を床について、両腕を広げて構えた二挺のP90をフルオート射撃しながら、上半身だけを捻りながら全方位を掃射する。 刃物を持った敵の懐に、背中から潜り込む。そして下から顎に向けて射撃。 機能停止した機械を盾のようにしながらマガジンを交換し、また素早く飛び出す。 舞うように敵中を駆け回る。敵の放つ銃弾はウチではなく、回りを取り囲む味方の機械兵を貫いていく。 「くぁっ……!!」 激しく動いたために傷口が開く。黒い着物の脇腹部分が赤く染まる。 けど止まる事は許されない。蝶のように舞い続ける。止まれば死ぬ。踊り続けろ。 「黒霧流銃拳術一の型」 一気に踏み込み、強く跳躍。 「紅葉雨(べにはあめ)」 前方にジャンプしながら、くるくると回転。フィギュアスケートのトリプルアクセルようなジャンプをしながらP90をフルオート射撃。 そして両腕を真上に向けて着地。 その後間髪いれずに真上から前方に銃をフルオート射撃しながら下ろしてくる。 そして最後にゆっくりと左右に腕を広げながらマガジンを全て撃ち切った。 ……多人数の人間相手に使えば、紅い鮮血が紅葉のように散るのだが、この場では紅葉とは言えない黒く淀んだオイルが散っていく。 「風情がないなぁ……。」 全身に油の雨を受けながら、そう呟いた。
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