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「この木が花を咲かすのを見たい。そう思ってから、その為だけに、あたしは"何百年"も費やした。諦めなかった。いや……諦めきれなかった。
数百年も枯れたままの木だ。もう咲くはずがない。
……そう思ってもやっぱり、諦める事はできなかった!
この木が妖木だと知った瞬間、やはりやめようと思った!
でも……ここで諦めれば、今までこの為だけに過ごしたあたしの時間、人生が全て無意味になる……そう思うと……!!」
彼女は震える自らの身体を抱き、涙を流しながら叫んでいた。
「……蘭丸、お前は昔、あたしになんて言った?」
玉藻に助けられ、玉藻についていき、玉藻を目標として過ごした日々。
その淡い黄色の着物を着た女性の背中を見て俺が思ったこと。
「アンタみたいに最後まで諦めずに自分の意思を貫き通す強さがほしいって言ったな。
そしてそれは今も変わらない。
俺は、アンタのような"諦めない強さ"が欲しかった。」
俺はスチェッキンマシンピストルをホルスターから抜き、玉藻に向けてそう言った。
「……あたしはな、蘭丸。」
対する玉藻も帯に差していたベレッタM92Fを抜いて、グリップ下部にマガジンを叩きつけるように装着。そしてスライドを引いて銃口を俺に向けてこう言った。
「お前みたいな"諦める強さ"が欲しかった。」
ああ、そうかい。
初めてこの女の本音を聞けた気がする。少しは近づけたということだろうか。
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