チンピラとエリート

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この大陸は広大で、大小合わせれば百は国家がある。 最も大きい国は大陸中央から西部に海まで臨むフランク王国で、その次が南岸に聖都ローマを戴く修道会だ。 領土や国力では、その2つが抜きん出るが、文化や歴史で語れば、他にも肩を並べる国々がある。 温暖な大陸南西部の辺境に飛び地に存在する、アラゴンやカステラの海運国家。 寒冷な土地に森林が広がる蛮族たちの国、バルト。 万年雪の高山にある、エルフたちの清潔な古都エール。 エールに同じ山岳都市だが、火山の地熱に恵まれた竜族の国フリギア。 そして、機械仕掛けの人工都市ガルトブルグと、その創立者たちの故郷であるドワーフの隠れ里。 ガルトブルグは、錬金術士が造った城塞都市である。 古、魔物や魔族がはびこった不毛の平原ガルトに、ポツンと聳える。 その、城塞都市、西の区画の下町に、かつて喋る猫が経営していた、小さい宿屋がある。 今の宿屋の主は、その猫に育てられた人間の若者になっている。 まだ宿屋は若いが、商売そのものは順調だ。 憂鬱な主を余所に、客は旨い飯、清潔なベッドと風呂を求めて、次々現れる。
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