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宿の力仕事をしてくれる傀儡人形が壊れたままでは、日々に支障が出る。
実際、最近の養女の忙しさは目が回るようだ。
かといって、宿屋も過労で倒れるような奴だ。
傍目には、ドリルでも鉄ハサミでも、直したらと思える。
しかし、一時でも……
イヤなのだろう。
この街には、技師として有能な職人はたくさんいる。
しかし、芸術的センスを持ち合わせた工芸家や芸術家がいない。
いないわけでもないが、魔女たちの内職程度だ。
クマのぬいぐるみと、精巧なビスクドールは違う。
笑うのは、養女共々、十二分に笑った。
しかし、やはり直してやらねば。
魂も宿りそうな人形だ。
ぶっきらぼうな木偶じゃあるまいし、工具を手にしても、壊れたままでも、気の毒だ。
エリアルは、外国の名工を探してやろうと考えた。
修道会領やフランク王国なら、依頼主の心情を気遣える名人の1人や2人、いるだろう。
国の外の噂や情報なら、貿易商たちに訊くに限る。
聞き込みぐらい、安い用だ。
それに、無い無い言っても仕事はマメに探さねば。
顔馴染みも増えた繁華街へ、エリアルはブラブラ歩いた。
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