チンピラとエリート

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浅黒い肌のチンピラは、ややガニ股で石畳みを駆け抜けていく。 チラと振り返った表情には、シニカルな笑みが浮かんでいる。 (性根が悪そうだ) 逃亡者は中年にさしかかり、追うエリアルはそこまで行かない。 しかし、2人とも青年期が長いエルフのこと、齢100歳は確実に過ぎている。 「ゼノン!!また万引きか!?」 誰かが叫んだ。 追われる男が、しまった、といった顔をした。 追っ手の若者はニヤリ笑う。 「待ちな!!ゼノンさんよ!!」 チンケな悪党は振り向かず、真剣に逃げ始めた。 すれ違いの買い物客を突飛ばし、屋台に砂を飛ばす。 悲鳴や罵声、呼び笛の音。 ピィィーピィィーピィィー 追われていたダークエルフは、さらにギョッと辺りを見回した。 肌色は白エルフそのもののエリアルも、この笛は初めて聞いた。 少し不安になって、自分も周囲を見回すと、チンピラの向こうに白いレースのリボンタイが似合う白エルフの青年が現れていた。 右手に弓、左手に小振りの弦楽器。 新手の美青年は、楽器を顎下に当てて、弓を構えた。 路上の大道芸人が良く弾いている情感豊かだが難しい弦楽器だ。
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