チンピラとエリート

8/10
前へ
/563ページ
次へ
「……え…ええ~~?」 楽器で戦うなら、召喚か魔曲だろうが、あの鍛え方なら普通に殴った方が手っ取り早いだろう。 「鉄箱投げんじゃねぇよ!  死ぬだろう!!」 「失敬な!バイオリンだ!」 「バイオリンでいいンだ…」 思わず口を挟んだ金髪のハーフエルフを、白と黒の違いはあれ、純血のエルフたちは同時に振り返った。 「…あ、いや、さすが、錬金術士の国はイロイロあるネ」 再び、純血種同士は向き合い、敵意をぶつけ合う。 次は、あの改造バイオリンを鈍器に接近戦か。 ピィィー ピィィー 再度の呼び笛に、黒エルフは舌打ちし、空や周囲を仰いだ。 「ゼノン、警備隊が来る!」 エリアルの脇を走り抜けて、耳の尖った丸顔の青年がダークエルフに寄った。 背が低いとは言わない。 しかし、小兵ならではの、はしっこい動きに、親友の女剣士を思い出した。 あちらは銀髪、こちらは深緑の髪。 好奇心の強い自信家でなく、下を向いて常に謝ってそうだ。 大人しそうな青年である。 18、9歳くらいだろうか? 「ロス!  いい加減にしろよ!?  君も警備士ならば…」 リボンタイの青年がキツい口調で叫んだ。
/563ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23人が本棚に入れています
本棚に追加