チンピラとエリート

9/10
前へ
/563ページ
次へ
「警備士?」 エリアルは、再び親友の女剣士を思い出した。 そうか、だから、身のこなしが似てたのだ。 彼女も基礎訓練を警備隊で受けたろうし、深緑の彼もそうなのだろう。 童顔だが、苦労で大人びた風貌の青年に、中年手前のチンピラ・エルフは、舌打ちした。 忌々しそうだ。 「覚えてろ」 捨て台詞に踵を返し、青年に先導されて大通りを悠々と去っていく。 青年があちこちに頭を下げて歩むに、人混みも野次馬も道を空ける。 「…態度はでかいが、情けない奴だな…」 「ロスが警備士に昇格してから、酷くなる一方だ」 エリアルは、声の方に振り向いた。 当然だが、鍛え方が楽師らしくない細マッチョがいた。 「一昨年なったばかりの末席第八位といってもな。  毒師ロスに逆らう奴はいない。  食べ物、水。毒は皆怖い」 軽々と鉄製バイオリンを肩に担ぎ上げる。 「ま、僕も、警備士だが」 彼は、入隊時からあの筋肉で、基礎訓練はしてないだろう。 キャラ的に。 そんな三枚目な美形が来た方から、大勢が走ってくる気配がしてきた。
/563ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23人が本棚に入れています
本棚に追加