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アリスンは、上司から渡された報告書を抱えたまま、北にある役所へ真っ直ぐ向かった。
役所のロビーには、弟子で従卒のマーズ少年が共通講義の教本を捲りながら待っていた。
駆け寄ってきた弟子と共に、窓口カウンターのサイドから事務室に入り、下級の事務官たちに起立して迎えられる。
逆に礼儀正しく敬礼してから、副長席にいた初老の事務官に向き直った。
事務長官席は聞いたとおり空だ。
「シェーラ様には、報告されたのですか」
「もちろん!ですが、放っておくように、とおっしゃるばかりで」
アリスンはため息がちに、再度事務長席を見た。
「ガレス先生へは…」
いいえ、と事務官たちは皆首を横に振った。
「…仕事が進まないのは、もう、諦めました」
副長が情けないことを言う。
しかし、長官職の並外れた有能さを知るだけに、アリスンは仕方ないと思った。
「いずれ、こういう日は来るものでしたし、こちらは何とかします。
ですが、バロン様の行方が解らないまま──いいえ、我々に知らされないまま、というのは、どうにも」
用意周到な警備士長に感心させられたばかりのアリスンは、再度ため息を吐いた。
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