武官と文官

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どうしよう。 しばし迷って、アリスンは役所の4階にある総長室に向かった。 この都市国家ガルトブルグは、錬金術士たちの国で、国の長は総長と呼ばれる。 その今の総長は、アリスンの師、白髭の老人ガレスだ。 行方不明と知らされたバロン師は、錬金術士ではない。 が、その法務知識で特別に市民になり、さらに特別に行政事務のトップに抜擢されていた。 バロンを後押ししたのは、総長ガレス師だ。 一番弟子である魔女シェーラ・シェーラを法務長官に据え、バロンの上司にしたのも、ガレス師だ。 シェーラは、錬金や魔法は国でも十指に入るは確かだ。 しかし、法律や行政事務はそうでもない。 本人も興味はまるで無いだろう。 得手不得手のない才女だし、バロンも気が回る男だから、なんとなくこなしてきたようだが… (こういったときのために、姐さんを長官にしてるんだろうに…) この街は実力主義だ。 市民どうし、錬金術や魔法、剣の実力が物を言う。 知識と技術で武装した無法者ギルドに、法律というモラルとルールを持ち込んだが、バロン副師長12年の業績だ。 10年前、街に来たばかりの頃を思い出すと、バロンには頭が下がる。
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