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結論から言うと、総長ガレスはバロンの行方不明のあらましを知っていた。
「手紙が来たようでね」
総長の手元には、複製らしき便箋があった。
総長の秘書官で護衛官たちの仕事だろう。
「シェーラ姐さんは何をやってるんですか」
「手紙、読む?」
鼻を顰めて唸りながら、アリスンは手紙の写しを手に取った。
従卒も脇から覗き込んで来る。
「──バロン、…男爵(バロン)、
ラーンスロット男爵は、
本当に帰国したのですか!?」
手紙の写しを指で勢いよく弾いた末弟子の、このわかりやすさが、老ガレスは好きだ。
「うん。たぶんね」
「…この、マダム・エリクシール…“霊薬夫人”などという、胡散臭い女名の手紙で!?」
「そだね」
老ガレスは、手紙の一部を軽く指で小突いた。
「本名が書いてあるからね。
バロンはひたすらバロンじゃった。この15年」
アリスンは、ハッとして指を折った。
「過去を消すのに、3年ほど地下で匿った。いい年頃を本ばかり読んでおったよ。
後は、彼次第にすべきかと思ってな」
慌てていても、下級事務官たちは、なんとかすると自信を見せていた。
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