武官と文官

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群青色の虎縞猫は、テーブルに登ってダランと寝そべり、尻尾を振っている。 2人の人間の会話を聞いている様子の猫を見てから、宿屋は切り出した。 「シェーラとは……話してねぇんだな。ブラッグ警備士長にも」 「これから話をするんで、預かってもらいたいんだ」 彼女の弟子で従卒の少年マーズが、ホールに入って来た。 ウェイトレスのアイゼル少女の買い物袋を抱えている。 「ロック、マーズが今日は泊まるって」 アイゼルはニコニコしている。 師匠の考えを知っているのか、マーズ少年は神妙だ。 「あとな、マリアの様子を見て、場合によってはローマ行かねばならん」 「……フリギアは?」 「……なんとかなる」 「捨てられッぞ」 宿屋は、女警備士が警備隊のレポートらしき冊子を抱えているのにも気付いた。 「終わっているなら、既に終わっているか…」 銀髪の娘は、力強く頷いた。 「代金さえもらえば…」 「お前も、ホドホドにな」 「いやいや、同類に出来ねぇだろ!」 警備士アリスンは、宿屋のツッコミに笑って誤魔化したまま、風のように去っていった。 状況不明のままにできない宿屋は、水盤占いの準備を始めた。
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