-第1章-

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かすかに、水滴の落ちる音がした。 木々独特の香りを乗せた爽やかな風が、ひんやりとして気持ちがいい。 風か…… この展開、前にもあったような気が……。 『―――……る』 (え……声がする……?) 薄ぼんやりした頭で考える。頭に直接響いているような……これは誰の声だ? 『―――眠ってる?』 『だいじょぶ?』 「!?うわあっ!」 急速に意識が浮上し、ばっと飛び起きた優弥の目の前には、見たことのない丸っぽい生き物がたくさんいた。 『わ、起きた』 『起きた起きた』 どうやら寝ていた優弥を囲んでいたらしい。 優弥が目を覚ましたことを喜んでいるのか、次々と飛び跳ねている。 個体によって大小さまざまな羽が背から生えており、よく見ると小さくて可愛らしい容姿をしていた。 周りを見渡すと、苔むした柔らかい大地に、千年以上は経っていそうな大樹が見渡す限り生えている。 (ここは……まるで森林のようだけど) 『そうだよ、ここはメーデルランシアの森―――ヴァース』 心を読まれたことに内心驚いたが、それよりも気になるのは聞きなれない単語。 「メーデルランシア?」 .
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