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しかしふと、地につこうとしていた手が革のような固いものに触れたのでそちらに目をやった優弥は、しばし驚いて動けなかった。
(なんで、これがここに……)
そこには、何故かはわからないがここに来ることになった、そもそもの原因であるあの白い本があった。
しかも精霊や動物たちはどうやらこの存在に気付いていないようだ。
全く訳のわからない本である。
(一応持っておくか)
これ以上害があるようには見えないのでそう思い直し、それとなく自分のほうに引き寄せていると、ふいに思い出したように長が優弥へ声をかけてきた。
「おお、そうだ忘れとった」
「何?」
「その首飾りにはもう一つ力があってな。
どうしても協力や助けが欲しいときにそれに触れて念じてみるとよい。
そうすれば、我らアルフェが主に力を貸そうぞ」
「え……いいのか?」
優弥が信じられないのも無理はない。
先ほどの話で優弥は、人間と精霊が仲の良い関係であるばかりではないことに気付いていたからだ。
しかし、それも杞憂だった。
「ああ。主のメイティスを大量に使うから、頻繁に使うものでもないがな。
主は何か強い運命をもっているようだ。きっと必要となる時がくるだろう」
それに、と長は付け足して微笑んだ。
「主は我らの『友達』だからな」
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