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「失礼しまーす」
ガラガラと音を立てドアを開けると、どうやら優弥が一番に来たらしく電気はついていなかった。
「いっちばんじゃーん」
意味もなく嬉しくなり、歌うように呟いて、カウンター席に近い距離にある窓を開けた。
しばらく心地よい風を肌で感じていたが、ドアを開閉する音が後ろから聞こえたので慌てて自分の指定位置に着いて本を受け取った。
……
…………
………………
そして気付けば日が傾き始め、時計ももう5時半を過ぎていた。
「はあ……暇だ」
最後に本を借りた人が出ていったあと、30分ほど経っても珍しく誰も来ないので、優弥はカウンター席でだらけていた。
「……しょうがない。利用する客もいないことだし、閉室時間まで物色させてもらおう」
ずいぶん物騒で間違ったことを言いながら、彼は席を立ち面白い本がないか漁り始めた。
優弥はもともと読書することが好きなので、高校に入りたてのころは―――もちろん、借りる側ではあるが―――ここもよく訪れていた。
そのため実はすでにこの図書室の本はあらかた読破したのだが、最近入荷したばかりの本があると他の図書委員から聞いていたので、改めて室内を見て回ろうと考えたのである。
「内容までは聞いてないからなー。ファンタジー系統の本だったら嬉しいな」
誰もいないことは確認済みなので遠慮などせず独りごとを口にし、あまりよろしくはないが口笛を吹き始める。
もはや完全に自らの世界に浸っているようだ。
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