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「あ、あった」
少しもかからず、四角い机に所狭しと並んでいる『お勧めの本コーナー』からお目当ての新書を手に取ると、気まぐれでさらに奥まで足を進めてみることにした。
優弥は文庫本程度ならあっという間に読み終わってしまうため、いくつかを暇つぶしの為にストックしておきたかったのである。
そんなこんなでゆっくりと本棚を見ていると、ふと見慣れない背表紙が目にとまった。
「なんだ、これ」
ご機嫌な口笛をやめ、まじまじと見つめる。
この図書室内では優弥の知らない本のほうが珍しいのだが……
そこには優弥も見たことのない白い本と黒い本が2冊並んで挟まっていた。
(何かおかしい?
……!
これ、番号が書いてないぞ)
本来なら、番号が付けられ種別票が貼られそして管理されるはずだが、なぜかこの2冊にはそれがない。
不思議に思い優弥が手に取ると、それらはノートほどの大きさで。
右にあった白いほうが新しく、辞書くらいありそうな分厚いもの、左にあった黒いほうはとても古そうな、教科書ほどもないくらいの厚みを持つものだった。
優弥はなんともちぐはぐなこの組み合わせが可笑しくて、表紙も質素なそれらを文庫本と共にカウンター席へ持っていくことにした。
しかし、果たしてこの選択が彼の運命を大きく変えることになろうとは誰が想像しただろうか―――
そして、気まぐれというものが実に恐ろしいものだと、優弥はのちに思い知らされることになる。
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