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エンデュミオはそれには答えず、ただ何処か儚い微笑を浮かべた。
「霧でかなり濡れてしまっただろう。体を壊さないようにしてくれ」
そう言い残して体の向きを変える。
森の中に消えて行く姿を見送りながら、その場に立ち尽くす。
彼は何処へ帰るのだろう。
街へは帰らないのだろうか。
そんな疑問が浮かんだが、それよりも胸を占める事があった。
また会えるだろうか。
一夜の夢のような邂逅。
ほんの僅か側にいた、それだけで。
心は、あの謎めいた青年にどうしようも無く惹かれていた。
きっと、この夜に。
生まれて初めての恋に落ちたのだ。
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