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街に入ったセレネが見付けた宿屋の女主人は、気持ちの良い笑顔で心良く迎えてくれた。
「まあ、こんな時間に。さぞお疲れでしょう。すぐにお部屋を用意しますね」
「すみません。本当はもっと早く着く筈だったのですけど、森の中で迷ってしまって」
その言葉に、女主人が驚いたように口に手を当てる。
「よく無事でしたね。あの森に迷ってしまうと、もう戻れないと言われているんですよ」
「え?」
「此処は元々、城下街なんです。森の向こうには今はもう誰もいない城があるんですよ。でも、城に行き着ける者はいません。森に阻まれ霧に惑って、二度と帰れなくなってしまうんです」
セレネは思わず息を飲んだ。
そんな城があったなんて知らなかった。
森に踏み込んだ時も、城のような建物は見えなかった。
それが阻まれ惑うという事だろうか。
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