純愛歌

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街の広場で、人の行き交う通りで。 歌を紡いで時を過ごす。 そして足を止めてくれる人々が自ら渡してくれる僅かな品々で、生活の糧を得る。 決して楽な暮らしではないけれど、歌が好きだから続けて行ける。 それまで何処か元気が無かった人が、立ち止まって微笑んでくれる。 俯き加減に歩いていた人が、顔を上げて手を叩いてくれる。 向けてくれる笑顔が、何よりも嬉しい。 今は亡き母もよく言っていた。 歌は魔法なのだと。 悲しい心を泣きたい心を、少しでも励ます為の。 優しく背中を押す為の。 そうして世界に笑顔を広げて行く。 何があっても、歌があるなら。 そこに込める想いがあるなら。 微笑みを忘れないでいられる。
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