純愛歌

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此処に来たところで、また会えるとは限らない。 それでも街で捜すより森で待っている方が、彼に近付ける気がした。 また会えるかは分からない。 でも少ししか知らない貴方に、少しでも近付きたいから。 体を包み込む霧の静寂を感じながら、目を閉じる。 唇が紡ぎ出す旋律は、頼りなく揺るぎなく。 例え今は届かなくても、歌に込めた想いが巡って。 いつか貴方の元へ、届くだろうか。 そう信じているから。 信じていたいから。 今はこの森に歌を捧げよう。
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