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「いえ、そうではなくて。貴方に会いたくて」
「私に?」
エンデュミオは目を見張り、横を向いて呟いた。
「……そんな事を言われたのは初めてだ」
「え?」
「いや、何でもない」
再び向けられた瞳には、感情を読ませない光があった。
「折角だ。貴方の歌を聴かせてもらいたい。良いだろうか」
「あ、はい」
エンデュミオの視線を感じて緊張しながらも、セレネは姿勢を正してお辞儀をする。
この森の静寂を壊さない、静かな歌。
この人によく似合う、儚くて優しい歌。
記憶している幾つもの歌の中から相応しいものを選び出し、息を吸い込む。
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