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「やはり貴女の歌は良いな。とても優しい気持ちになれる。貴女はきっと、優しい心の持ち主なのだろう」
エンデュミオは赤い瞳を細めて言い、改めてセレネを見た。
「セレネと言ったな。貴女はあの街の娘か?」
「いいえ。私は旅をしながら歌っている者なんです」
「旅の、歌人……」
はっと息を詰めて繰り返した途端、エンデュミオの顔が苦しげに歪んだ。
荒い呼吸をしながら、自分の服の胸元を掴む。
「エンデュミオさん?大丈夫ですか!?」
慌てて体を支えようとしたセレネの手を、先程の穏やかさからは想像出来ない激しさではねのける。
「……っ、私に、触れるな!」
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