純愛歌

21/25
前へ
/84ページ
次へ
反射的に手を引いたセレネから目を逸らしたエンデュミオは、僅かに抑えた口調で続けた。 「すまない。私なら、大丈夫だ」 「そんな風には見えません。お医者様に診て頂かないと……」 かなり我慢しているようだが、この苦しみ方は尋常ではない。 エンデュミオの顔には脂汗が浮かび、血の気も引いている。 ただその真紅の瞳だけが、より鮮やかに光っているように見えた。 何とかして医者の元へ連れて行かなければ。 「来て下さい、エンデュミオさん。早くお医者様の所へ行きましょう」 しかしエンデュミオはその場を動かず、側の木に体を預けた。
/84ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加