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「……迂闊だったな」
「え?」
ぽつりと洩らした言葉に含まれているのは、自嘲の響き。
そして、深い悲哀だろうか。
「すぐに気付くべきだった……。貴女の優しい歌に、判断が鈍った」
そう言いながら木の幹に手を付き、森の奥へ体を向ける。
「私の事は忘れてくれ。そして、すぐに街を発て。……それが、貴女の為だ」
それだけ言い残して立ち去ろうとするエンデュミオの背中に、思わず叫ぶ。
「ま、待って下さい!そんなに苦しそうなのに何処へ行くんです?エンデュミオさん!」
呼び掛けに一度も振り向く事無く、後ろ姿が木の間へと消えて行く。
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