純愛歌

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「は、はい」 見詰めたままで頷くと、青年は向きを変えて一歩を踏み出しながら言った。 「こちらだ」 「えっ?」 「街はこちらにある。案内しよう」 そう告げながら歩き出す青年の後を追う為に、慌てて立ち上がる。 霧が出ている夜の森の中でも、その足取りに迷いは無い。 だからだろうか。 見知らぬ人に付いて行く事に、不安や恐れは生まれなかった。 広い背中から漂っているのが、何処か自分と通じる感情と思えたからかもしれない。 一人の静寂の不安。 長い冷たい夜に慣れながら、明るく暖かな朝を待っているような。 そう、ずっと何かを誰かを待っているような。
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