純愛歌

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「……礼を言うのは、私の方だ」 言葉を探すように沈黙していた青年が、不意に微笑んで口を開いた。 「今宵は思いがけず良い歌を聴かせてもらった。有り難う」 「あ……いえ、そんな」 歌を褒められるのは、初めてではないのに。 こんなにも嬉しいのは、思いがけず青年の笑顔を見れたからだろうか。 これで会話を終わらせたくない一心で続ける。 「私はセレネといいます。貴方のお名前を聞いても良いですか?」 「名前?……エンデュミオ」 エンデュミオと名乗った青年は、梢越しに見える空に目を向けて言った。 「もう暁が近い。貴女は早く街に行った方が良い」 「はい、そうですね」 少し躊躇ってから、意を決して赤い瞳を見詰める。 「また、お会い出来るでしょうか」
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