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「なんだよ待ち合わせかよ。」
とか言いながら去る男を無視しつつ、俺はエリを抱きしめてた。
「エリごめん…俺、誕生日すっかり忘れてた。」
正直に言うとエリは腕の中で首を横に振る。
「来てくれてありがとう…。」
可愛いじゃねぇかチクショー。
「お前バカじゃん…。なんでこんな男好きなんだよ。」
思わず言うとエリが笑った。
「私もそう思う。」
「ってめっ!」
「でもね。……祐ちゃんじゃなきゃダメなんだ。誕生日に会いたいのも、抱かれたいのも、祐ちゃんだけなの。」
最後の方、何だか声が震えてるような気がして。
俺はエリを抱きしめる腕に力をこめた。
「…あと30分しかないけど…デートすっか。」
「うん!!!」
エリの嬉しそうな顔に、俺も自然と笑みがこぼれる。
ふと思いついた俺はそっとエリの手を握り歩き出した。
「祐ちゃん!手…」
「誕生日プレゼントとか用意してねぇから…今日だけな。」
エリは泣きそうな顔をしながら、俺の手を握り返す。
何だかザワザワと騒ぐ胸に…俺は気づかないフリをした。
これは愛じゃない。
自分に必死で言い聞かせながら。
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