誕生日

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「…何?」 振り返って睨みつけたら、エリが泣きそうな顔をした。 「あ…今日…してない…し…もうちょっと一緒に…」 お~やっぱこいつの泣きそうな顔そそる。 俺は乱暴にエリの手を引っ張り部屋の中に入れた。 「あっ…ゆ、祐ちゃん?」 「これが望みだったんだろ?」 我ながら感情のこもらない笑顔を向け、エリを床に組み敷く。 分かってた。 エリが望んでいる事は、こんなものじゃないって。 エリは、俺に愛を求めてる。 自分が俺を愛しているように、俺にも自分を愛して欲しい、と。 でも…愛ってなんなんだよ。 それ、美味しいのか? 楽しいのか? 愛なんて…苦しいだけじゃんか。 どんなに愛しても人は裏切る。 どんなに優しくしても人は離れていく。 だったら…俺はもう愛なんか要らない。 そんな歪んだ考え方をするようになったのは、高校1年の時の…夏休みだった。 理由は話したくない。 でも……すっげー辛くて、悲しい夏だった。 「祐ちゃん…何考えてるの…?」 キスの合間にエリが問う。 快感に潤んだその瞳に、俺の冷たい顔が映っていた。 ……愛なんか要らない。 そう思って過ごしていたら、いつの間にか愛自体が分からなくなっていった。 たくさんの人と体を重ね、経験値は上がったはずなのに。 それはただの『体だけの繋がり』でしかなかったから。 もちろんそれを望んだのは俺なんだけど……それが俺の全てを、こんなにも歪ませてしまった。 もう戻れない。 歪んでしまう前の俺には…二度と戻れない。 考えていた頭を振り、エリに噛み付くようなキスをした。 今日も、優しくなんて出来そうにない。 奪うような激しさで、俺はエリを抱いた。
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