3章 断罪者

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それでも大したダメージではないし、突きを放とうと思えば撃てた。但しそれでもおそらく相打ちだっただろう。 破壊力重視のメイサーの一撃と、筋力値優先とはいえ片手剣の一撃。 割に合わない。 これほど強いプレイヤーならば、SAOのボス攻略等で出会っていてもおかしくない。 キリトがそう思い記憶を掘り返そうとしていると、レオは突然構えを解いた。 「つまんねえなぁ、オイ」 メイスを地面に下ろし、落胆したように肩を落とす。 「英雄ってのはこの程度か? それとも、ぬるま湯に浸かり過ぎて剣が錆びたか……」 「……つい最近、同じような事を言われたよ」 あの銃の世界で、赤目の亡霊に。 「ならもう一度言ってやる。お前さんは腐り過ぎた。この世界に浸り過ぎた。 やはりお前さんを本気にさせるには」 チラリと、レオの片目が遠くでこの戦いを見つめるアスナに向く。 「あの女を殺すしか――」 ズバンッ! という衝撃音。 刹那で間合いを潰したキリトの剣。しかし剣はレオのメイスで防がれていた。 「アスナに手を出したら、許さない!」 「いい眼になった」 レオが武器を弾くとキリトは再びバックダッシュで間合いを取る。 「だがまだ足りない。キリト、お前さん何故抜かない。お前さんはもう一刀抜ける筈だろう?」 「あんた程度に出す必要が無いのさ」 二刀流。SAOでは、ヒースクリフの神聖剣と並ぶユニークスキルに分類されるキリトに与えられた剣技。 しかしALOでは、その二刀流も含め十数種のユニークスキルは全て破棄されている。最早、あの凄まじい剣技を完全に再現する事は出来なくなっている。 それでも、未だ二刀を携えるキリト。つい先日には巨大ギルドを相手にたった二人で数分の足止めを果たした話も広まっている。 それ以前に、あのユージーンとの戦闘時も二刀を振るったのだ。 キリトが未だ二刀流剣士だという事は、既に大抵の人間が知っている。 「……そうか、まだ足りないってんならその気にさせるしかねえな」 苛立たしげに眉をひそめるレオ。 「英雄、誰もがお前さんに感謝をしているなんて思うなよ」
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