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旧ALO、現ALOでも間違いなく顔役の一人として挙げられる戦士。
巨大勢力のサラマンダーを、昔も今もまとめあげるユージーンを、このゲームをプレイしていて知らぬ者はいない。
キリトに敗れはしたものの、その実力はALO最強と呼ばれていた。
「これはこれは、またしても大物だ」
さすがのシェイドもユージーンの事は知っているようだった。
だが、ユージーンが赤い眼でひと睨みすると肩を跳ねさせて後退る。
「ユージーンの旦那」
決して背の低くないクラインが巨漢のユージーンを見上げる。
「悪いな。此処は譲ってくれ」
「譲ってくれって……」
あまりにも予想外の頼みに、クラインは目を丸くする。
「あんたはサラマンダーの代表だぞ?
軽々しく決闘なんざしちゃヤベェだろ」
「オレが負けると言いたいのか?」
気の弱い者なら腰でも抜かしそうな威圧感に当てられて、しかしクラインは、ため息と共に肩を竦めた。
「万が一にもさ」
「億が一にも有り得ん」
巌(いわお)のような顔で笑みを作り、クラインを差し置いて前に出る。
「オレとて立場は理解している。が、オレも一人のプレイヤーだ。
たまには思い切り剣を振りたい」
クラインは刀を肩に担ぎ、その背中を見送った。
もはや手を出すつもりはないようだった。
あらゆる意味で誰よりも強い男はしがらみも多い。
そんな男の珍しいワガママならば、聞き入れてやろうと。
「い、いいの?」
心配になったアスナがクラインに尋ねる。
「オレには止める理由はねえ。
おれぁキリトに代理を頼まれたが、絶対オレじゃなきゃいけないとも言われちゃいねえしな」
「でも、もし負けたら……」
「仮に負けても、旦那の信頼はその程度で失う程脆くはねえよ」
今更彼の力にケチをつける輩などいる筈はない。
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